樹脂とは?プラスチックとの違いから種類・特徴まで初心者向けにわかりやすく解説

そもそも「樹脂」とは?

タケノ コウ
タケノ コウ

樹脂ってなに?

改めてそう聞かれるとうまく言葉で説明できないのではないでしょうか。
身の回りには樹脂からできている物に溢れていますが、いざ「樹脂」について説明してと言われてもなかなか説明に詰まります。

樹脂について学び始めた方のよくある疑問

こんな疑問も、「全て」この記事で解決していきます。

挨拶が遅れました。
はじめまして。タケノ コウと申します。
私は本業は樹脂製品の設計をしています。
樹脂製品の設計をするためには、樹脂材料の特性についてよく知っていないとできません。
私が樹脂について学び始めた時に、実際に引っかかった部分について初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

樹脂の基本的な意味と「プラスチック」との違い

まずは、「樹脂」とは何か?という結論から入ります。
元々「樹脂」という言葉の語源としては、文字の通りに松脂(まつやに)や漆、琥珀などの天然の樹液のことでした。
松脂は、温めると柔らかくなり、冷やすと固まる性質があります。この性質のことを「熱可塑性」と言います。
後々天然の樹脂だけでなく、人工的に合成した熱可塑性を持つ材料が出てきます。
これら熱可塑性という共通の性質を持つ天然樹脂、合成樹脂をまとめて広義的に「樹脂」と呼ばれています。
図で表すとこのようになります。
「樹脂」の中には「天然樹脂」と「合成樹脂」があり、「合成樹脂」の中には後で出てくる「熱硬化性樹脂」「熱可塑性樹脂」があります。

次に「樹脂」と「プラスチック」の違いについてです。
先ほど「樹脂」には広い意味があり、「天然樹脂」や「合成樹脂」が含まれているとお伝えしましたが、ざっくりした説明としては、この「合成樹脂」がイコール「プラスチック」と考えて良いかと思います。

もう少ししっかりと説明すると、JIS(日本産業規格)では「プラスチック」を下記の様に定義しています。

必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料

なかなか理解しにくい表現ですよね。
噛み砕くと、「高重合体」を含んでいて、かつ「好きな形へ変えられる」性質を持つ材料という意味になります。
「高重合体」とは、多数の小さな単量体(モノマー)が化学的に結合(重合)してできた、分子量が数万〜数十万以上にもなる高分子化合物のことを言います。

そもそも「プラスチック」という言葉は、ギリシャ語で「塑像の」「形作れる」を意味する「plastikos(プラスティコス)」からきています。

天然樹脂と合成樹脂の違い

天然樹脂」は、松脂(まつやに)や漆、琥珀などとご紹介しました様に、天然の物から採取できる素材のことを言います。
他にはゴムの木から取れる天然ゴムや樹液だけでなく、動物から取れる膠(にかわ)やべっ甲も天然樹脂に含まれています。

対して「合成樹脂」は、石油や植物、鉱物などを原料に化学的に合成された高分子化合物のことを指します。
天然樹脂に比べ安定的な供給が可能で、金属と比べて軽く加工しやすいため、大量生産大量消費のこの時代に適した素材といえます。
日常的に使用するプラスチック製品のほとんどはこの合成樹脂が使われています。

「樹脂」「プラスチック」「ポリマー」の使い分け

「樹脂」「プラスチック」について、解説してきましたが、もうひとつ覚えていただきたいのが「ポリマー」です。
「ポリマー」とは、分子量が小さい化合物(ポリマー)が、鎖状に多く繋がった巨大な分子のことを言います。
日本語では、「重合体」や「高分子」とも呼ばれます。

この「ポリマー」「樹脂」「プラスチック」の三つは使い分けがわかりにくく、よく混合しがちなので現場での使い分けを解説していきます。

「ポリマー」「樹脂」「プラスチック」は下記の様に使い分けがされています。

ポリマー:重合体、素材
樹脂:原料、材料
プラスチック:成形品、製品

正確ではないですがイメージしやすい様にパン作りで例えると、

ポリマー:小麦粉(炭水化物やタンパク質等で構成された素材)
樹脂:パン生地(塩や水などを入れてパンを焼く準備ができた材料)
プラスチック:焼き上がったパン(出来上がった製品)

設計の現場では、「ポリマー」はあまり使いませんが、「樹脂」はよく材料としての意味で使います。
また、「プラスチック」は成形を行った後の部品や製品のことを言います。

プラスチック(合成樹脂)を分ける大きな2つの分類

「樹脂」の意味の部分で触れましたが、プラスチック(合成樹脂)には、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」があります。
ここでは、普段設計する際によく触れるプラスチック(合成樹脂)の分類について触れていきます。

加熱すると柔らかくなる「熱可塑性樹脂」

「熱可塑性樹脂」は、熱可塑性の性質を持つ樹脂材料を言います。
熱可塑性は、熱をかけると柔らかくなり、冷やすと固まる性質のことです。
この性質により、熱で柔らかくなった材料を、好きな形へ変えることができます。
イメージとしては「チョコレート」です。

熱可塑性樹脂は、固まった後も温めるとまた形が変えられるため、材料のリサイクルが容易で、成形時に出るランナー(樹脂の通り道)や、ブロー成形ではバリ材などを粉砕し再利用ができます。
一方、熱で溶けるため高熱の環境では使えない弱点もあります。

加熱すると硬くなる「熱硬化性樹脂」

「熱硬化性樹脂」は、熱をかけると固まる性質を持つ樹脂材料を言います。
一定温度までは柔らかくなり液体状態になり、好きな形へ変えられ、そのまま温度をかけ、ある温度を超えると化学反応を起こし樹脂が急速に固まる性質があります。
一度固まると再度熱をかけても柔らかくなりません。
イメージとしては「クッキー」です。

熱硬化性樹脂は、一度固まると再度熱をかけても柔らかくならないため、耐熱性や強度に優れた材料が多くあります。
一方、熱可塑性樹脂と違い熱をかけても柔らかくならないため、一度固まった材料のリサイクルはできません。
また、しっかりと熱をかけて固めるまでに時間がかかるため、成形サイクルは長くなりがちです。

樹脂設計でよく使われる代表的な樹脂の種類と特徴

樹脂設計の実務でよく使われる樹脂をご紹介します。
先ほどご紹介した「熱可塑性樹脂」や「熱硬化性樹脂」は熱に対する性質で区別した分類となりますが、これからご紹介する3つの分類は耐熱性や強度の物性値から分類されています。
こちらの分類の方が設計の実務としてはよく意識しています。

日用品にも使われる「汎用プラスチック」

「汎用プラスチック」は、耐熱温度が100度以下のプラスチックのことです。
材料価格がkg単価300円〜1,000円ほどと比較的安く、日用品メーカーに勤める私がよく使うのが汎用プラスチックです。
また、耐熱温度が100度以下なので、容易に溶かすことができ成形しやすいメリットもあります。
一方、強度面は比較的低い材料が多いので、構造面での補強をするなど設計側でよくよく検討する必要があります。

タケノ コウ
タケノ コウ

日用品業界ではこの汎用プラスチックをめっちゃ使います。

強度が劣る材料でコストを上げずに、いかに必要な強度を出すか設計の腕の見せ所です。

代表的な汎用プラスチック

略号名称呼び方
PPポリプロピレンピーピー
HDPE高密度ポリエチレンハイデン、ハイデンポリエチ
LDPE低密度ポリエチレンローデン、ローデンポリエチ
PVCポリ塩化ビニルピーブイシー、エンビ
PSポリスチレンピーエス、ポリスチ
ABSアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンエービーエス

強度と耐熱性を高めた「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」

「エンジニアプラスチック」は、エンプラとも呼ばれ、耐熱温度が100度以上の樹脂材料を言います。
また、エンジニアプラスチックの定義として明確ではありませんが参考値として耐熱温度の他に、引張り強さで約500kg/cm2以上、曲げ弾性率で20,000kg/cm2以上の樹脂材料を指す場合もあります。
日用品でも機械的強度が必要な場合に、一部の部品で使うことがあります。
材料価格がkg単価で 数千円〜1万円ほどと、汎用プラスチックと比べて高価なため、必要な場合のみ使うようにしています。

代表的なエンジニアプラスチック

略号名称呼び方
PCポリカーボネートポリカ
PAポリアミドナイロン
POMポリアセタールピーオーエム、ポム
PETポリエチレンテレフタレートペット

過酷な環境に耐える「スーパーエンプラ」

「スーパーエンプラ」は、耐熱温度が150度以上の高温環境の連続使用にも耐えられる樹脂材料を言います。
金属代替として使用できるほどの機械的強度を持っており、医療分野や航空機、自動車のエンジン周りなどの過酷な環境の工業製品に使用されています。
材料価格がkg単価で数万円ととても高価なため、本当に必要な場合にのみ使います。
また、スーパーエンプラに対応している成形屋さんも少ないため、そういった面でも使いにくい材料です。

タケノ コウ
タケノ コウ

実際私も長いこと設計をしていますが、スーパーエンプラはあんまり扱ったことがありません。

医療機器では施術の前に滅菌工程を行いますが、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)で滅菌することがあるので、高温に耐えるためにスーパーエンプラを使ったことがあります。

代表的なスーパーエンプラ

略号名称呼び方
PPSポリフェニレンサルファイドピーピーエス
PEEKポリエーテルエーテルケトンピーク
PESポリエーテルサルフォンピーイーエス、サルフォン
PAIポリアミドイミドピーエーアイ

熱可塑性樹脂を分類する「結晶性」と「非結晶性」

ここでは、熱可塑性樹脂の固まった時の分子の並び方で分類される「結晶性樹脂」と「非結晶性樹脂」について解説します。
同じ熱可塑性という性質を持ちますが、分子の結晶構造を持つか持たないかで成形した後の性質が異なります。
設計をする上で非常に大切な部分です。

機械的強度や耐薬性に優れた「結晶性樹脂」

「結晶性樹脂」は、冷えて固まった時に鎖状の高分子が一部規則的に並ぶ結晶構造を持ちます。
結晶部分の構造は「折りたたみ構造」とも呼ばれます。

結晶性樹脂は、分子同士が規則正しく並ぶ結晶構造があるため耐摩耗性などの機械的強度が高い樹脂が多いです。
また、結晶構造部は薬品が入り込みにくく、非結晶性樹脂と比べ耐薬品性に優れる傾向があります。

結晶性樹脂は、結晶構造部で光が屈折、乱反射するため、透明性が低くなります。
また、冷えて固まる時に結晶部がより小さくまとまるため、熱収縮率が高く寸法がブレる場合があります。

体積中の結晶部分の比率を「結晶化度」と言い、樹脂が結晶化しはじめる温度付近で急速に冷やすと、結晶化する時間が足りなくなり結晶化度が低下します。
結晶部分が少なくなると、結晶性樹脂でも透明性を向上させることができます。
ペットボトルなどはこの結晶化度をコントロールして透明性を維持しています。

代表的な結晶性樹脂

略号名称分類
PEポリエチレン汎用プラスチック
PPポリプロピレン汎用プラスチック
PAポリアミドエンプラ
POMポリアセタールエンプラ
PBTポリブチレンテレフタレートエンプラ
PETポリエチレンテレフタレートエンプラ
PPSポリフェニレンサルファイドスーパーエンプラ
PEEKポリエーテルエーテルケトンスーパーエンプラ
PTFEポリテトラフルオロエチレンスーパーエンプラ

透明性や寸法安定性に優れた「非結晶性樹脂」

「非結晶性樹脂」は、冷えて固まった時に鎖状の高分子が並ばずに絡み合った状態で固まるランダム構造となります。

結晶構造がないため、光を通しやすく高い透明性があります。
また、熱収縮率が小さい樹脂が多く、寸法が安定するメリットもあります。

一方、結晶性樹脂と比べて機械的強度、耐薬品性に劣る傾向があります。
非結晶性樹脂は薬品に触れるとひび割れのようなケミカルクラックが入りやすいです。

代表的な非結晶性樹脂

略号名称分類
PSポリスチレン汎用プラスチック
PMMAアクリロニトリル・スチレン汎用プラスチック
PVCポリ塩化ビニル汎用プラスチック
ABSアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン汎用プラスチック
ASアクリロニトリル・スチレン汎用プラスチック
PCポリカーボネートエンプラ
PSUポリスルホンスーパーエンプラ
PESポリエーテルサルフォンスーパーエンプラ
PEIポリエーテルイミドスーパーエンプラ

チャートで分かる樹脂材料のざっくり選び方

ここまでご紹介した樹脂の性質から、樹脂材料の選び方をご紹介します。
実際には樹脂材料毎の物性値や耐薬品性、成形性など多くの要素から最適な材料を選ぶ必要があります。
ここでは分類からざっくり選ぶ方法として、チャート図を用意しました。
図の一番上の「スタート」から答えを選択するだけでざっくりとした材料選定ができます。

まとめ:樹脂の特性を正しく理解して最適な設計に活かそう

最後までお読みいただきありがとうございます。

「樹脂」ってなに?という質問に、少しでも言葉で返せるようになっていましたら幸いです。
ここまで樹脂とは何か、樹脂の性質などをお伝えしてきましたが、実際の設計現場では、もっと細かく樹脂の特性や物性などから使う樹脂材料を選んでいきます。
樹脂材料の選定は、ひとつ間違うと製品全体が成り立たなくなる可能性がある非常に重要な工程です。
慎重にひとつひとつのことを確認し、性能やコスト、品質を天秤にかけながら程よいところを探っていく作業です。

ぜひこれからも樹脂について学び続けていただけたらと思います。
樹脂のことを知るはじめの一歩としてこの記事が役立てられれば最高です。

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